本年度の目指す運動

理事長からのメッセージ

一般社団法人札幌青年会議所 2015年度 基本理念・基本方針

ひとの活力とまちの魅力による夢あふれる札幌の創造

基本理念

郷土愛溢れる自律したサッポロの創造

基本方針

  1. 勇猛な心漲る人材の育成
  2. 真の豊かさを実感できるまちづくりの実践
  3. 愛される組織の確立
  4. 透明性と信頼性を高める組織環境の構築

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理事長所信 - 一般社団法人札幌青年会議所 第64代理事長 田﨑 秀明

はじめに

<strong>一般社団法人札幌青年会議所 第63代理事長 池﨑 潤

 1869年(明治2年)5月11日、戊辰戦争の最終局面、箱館の地において新政府軍から総攻撃を受けた旧幕軍は、敗走を余儀なくされた。旧幕軍を指揮していた土方歳三は「我、この柵にありて、退くものを切る」と大喝を発し、敗走してくる仲間を進軍させた。七重浜より攻め入る新政府軍に応戦していた最中、一本木関門において、馬上の土方を一発の弾丸が腹部を貫き絶命した。享年35歳であった。
 土方が属していた新撰組という剣士集団は、「より武士たらん」という精神をもっていたが、その一方で、幕末という時代の転換期を駆け抜けた彼らは、組織の合理性と近代性を備え、洋式軍備化を進めていた。鳥羽・伏見の戦いを経験し、土方は「これからの戦争は大砲、鉄砲の時代であり、刀や剣は役に立たない」と述べたと伝えられる。
 幕末から明治という激動期から、およそ150年が経過したいま、我々はこの地で青年会議所という団体に所属し、自分と真摯に向き合いながら、まちやひとのあらゆる可能性を模索し、これから訪れる魔物と対峙している。限られた時間の中で、創始の志を継承し、単年度制をもって常に新たな叡智を蓄え、明日への黎明に向けて時代を切り拓く姿は、時代の移ろいを身をもって体現した一本木関門での土方に重なる。
我々は常に歴史の狭間に存在するが故に、時代のフロントランナーであり続けなければならない。

JAYCEEとは

 先人たちが不断の努力で切り拓いてきたこの国は、素晴らしい社会を創り上げた。多くの人が毎日当たり前のように一日三度の食事にあやかり、平等な教育を受け、快適な住居で日々安眠している。そして、さらなるテクノロジーの進歩は、我々の生活をより安心で快適なものにした。しかしながら、この社会は、溢れる「富」を手にした一方で、理解しがたいことも数多く生み出している。統計を基に換算すると15分に1人が命を断つ自殺者や目を覆いたくなるような凄惨な犯罪など、生命の尊厳などといった倫理観はまるで社会の闇に隠れているかのようであり、責任世代である大人たちは、そんな社会をなんとなく傍観している。一方で、己の中には何か漠然とした不安が蔓延り、将来への夢や希望を見いだせずにいる。
 どんな時代だろうが、世の中だろうがJAYCEEは頼もしい背中を魅せ、いまをまっすぐに見つめながら将来を信じなければならない。我々が夢や希望に満ちた将来を語らなければ、我々が描く未来は決して訪れることはないのである。まだ見ぬ、あるいは決して見ることができない未来のために、全ての責任を全うして時代に対峙する、それこそがJAYCEEであると堅く信じる。

輝くリーダーを生み出す

 インターネット百科事典として有名なウィキペディアで「札幌市」を検索し、経済の項目に関する記述を読むと以下の文面が踊る。
「支店経済の傾向が強く、地域企業の基盤は弱いが、第三次産業は十分に発達している。」
「開発が遅れたためか、地元を基盤とした民間の大資本に乏しく、三大都市圏や福岡都市圏にみられるような大手私鉄も存在しないため、都市計画・開発は、札幌市や北海道開発局などに頼ることもある。」
 ウィキペディアの信憑性についての議論は別として、客観的に映る札幌は、経済という側面を切り取ってみても、意外と前述のようなものである。官主導型の背景が色濃い地域性によるものと推察するが、あらゆる依存型の経済構造が要因で、傑出したリーダーを生みださない環境を創り上げてきたのかもしれない。
 国と地方の財政状況が悪化の一途を辿っている状況を鑑みれば、これ以上の依存体質は、未来へ向けたリスクを増長させる要因となる。グローバル化の進展著しい経済環境下においては、広い見識を体得し、確固たる胆識を兼ね備え、いまを描き換えていくリーダーを育成することが必要である。

未来を切り拓く

 20世紀における著名な歴史学者アーノルド・J・トインビーは、日本古来の神話に着目し、「自然と調和して生きることは、人間が生き残るための必須の条件である」と説いている。
 我々が住み暮らす札幌は、「サッポロ」という地名一つをとっても、アイヌ文化に由来するとおり、自然との調和によって成り立ってきた歴史の証左であり、自然に対する畏敬の念をいまに伝えるものである。近世においても開拓時に振興したホップ園や養蚕は札幌の風土を活かした政策であり、現代の我々の暮らしに脈々と息づいている。
 理想を追い求める我々にとって、確かな歴史観と郷土愛を育むことが、未来を切り拓く力の源泉となり、つよい地域を創り出す。何故なら過去と現在、未来、全てはつながっているのだから。

「できるだけ遠くを見据えて、人生を生きなさい」

アーノルド・J・トインビー

未来のサッポロを創造する

 いまから15年後の2030年、そう遠くない未来、社会構造は、大きく変化することが予想される。団塊世代は80歳以上となり、後期高齢者の割合がいまより倍増し、高齢者が人口の3分の1を占める社会が間違いなく訪れる。15年という時間は非常に短いものであり、その短い時間の中で大きな社会における変化を乗り越え、「明るく豊かな社会」を実感できる方法を我々は探し出さなければならない。しかも、超高齢社会にかかる問題は一つひとつが独立したものではなく、様々な形で互いに深く関わっている。したがって、問題を解決していくためには、市民の思いがひとつに合わさり、立場や分野を超えた連携が、新たな価値を生み出していく流れを創り出さなければならない。
 我々は、未来に向けたよりリアルなビジョンを策定し、大胆な発想で運動を展開し、市民の思いをひとつにしていく役割を担っている。また、異なる立場や分野の人々が互いにどのようにして連携していくのかという、道しるべを描いていかなければならない。問題を先送りせず、社会の力を集めて未来ビジョンを共有することができたとき、未来のサッポロの扉は開かれる。

どんなサッポロを次代に残すのか

 環境という分野は何よりも先に答えを導き、実現させていかなければならない分野である。様々な危機が起こる中で、環境と調和を図りながら持続可能な社会を創造していくことは、ひとの生死に直結することだからである。2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故が発端となり、原発の是非や、わが国における今後のエネルギー政策が活発に議論されるようになった。その一方で、震災から4年が経過しようとしているいま、我々の住む地域は、泊原発運転停止に起因した相次ぐ電力料金の値上げに、市民においても企業においてもさらなる経済の逼迫が予想される。厳冬訪れる札幌にとって、安全、安心なエネルギー政策は生命に関わる問題であり、市民一人ひとりがこれから安心して暮らすことのできるまちを、当事者意識をもって真剣に考え、議論すべきである。
 また、昨今、技術向上が著しい自然エネルギーの活用や、来るべき発送電分離に向けた方向性を汲んだ地域単位におけるエネルギーの活用方法を模索し、次代のあるべき姿を示したい。

共助が必要とされる社会

 「自助」、「共助」、「公助」の概念は、上杉鷹山公が定めた「自助」、「互助」、「扶助」の「三助」の理念に通じるものである。鷹山公は、藩主とは藩と人民を所有するものではなく、「民の父母」として尽くす使命があると考え、しかし、それは決して甘やかすものではないとも語った。
 しかしながら、戦後のわが国は高度経済成長を背景に、政府は世界に名立たる社会保障制度を確立し、また、大企業は年功序列という社会構造を作り上げた。結果として、確固たる「公助」を確立したわが国の国民は、いつの日か「公助」を求め、「公助」を生きる拠り所にしたが、昨今では、その確固たるはずの「公助」は次第に形を変え、国民は大きな不安を抱えるに至っている。
 ニューヨークにあるブルックリン地区で、興味深い取り組みが注目を集めている。ロカベスティングという手法で、一般市民が、地元企業に少額投資を行なう手法である。市民は、地元企業に協力したいという想いから数万円程度の投資を行い、その地元企業は、地域住民にサービスを還元することにより、その地域内で経済循環が完結し、地域雇用の安定と従来の3倍程度の経済効果を得られたという、まさに共助の精神が、新たなシステムを作り上げた例である。
 これは経済のグローバル化が進んでいる昨今において、ローカルへの発想転換が新たなものを生んだ好事例だが、我々も「共助」という概念に積極的に関わった運動を展開することで、地域が輝く可能性を秘めていることに視座を置きたい。

組織への帰属意識を考える

 ここ近年、札幌青年会議所は、会員の減少という最も解決しなくてはならない喫緊の問題に歯止めをかけ、会員数は増加傾向にある。この状況は他のLOMと比較しても一定の成果をあげていると思料する。しかし、我々はいま一度、組織の仲間が増える本質を再考しなければならない。日々高い理念を掲げ、ときには犠牲を払いながら、日々運動に邁進しているが、各々が組織に誇りを持ち、組織が掲げる運動にあらゆる可能性と価値を心から感じているだろうか。そして、その姿は、我々の地域に暮らす人々に鮮やかに映っているのだろうか。
 会員拡大は、言うまでもなくあらゆる面において、最も重要な運動である。だからこそ我々は、相手を口説く前に相手にとって魅力的な人間でなければならない。魅力ある人間が集結した組織は、外部からすれば、自然と羨望の眼差しを向けられ、仲間はおのずと増えていくものと確信する。組織にプライドを持ち、明確な戦略を掲げて、会員の増強に取り組んでいく。

より強固な組織を目指して

 力強い運動の発信は、組織の縦と横が有機的に連携し、ときには大胆に、そしてときには市民に寄り添う感性と感覚をもって遂行していくことが重要である。市民の立場に立てない、独りよがりな感性と感覚は、よほど運動が崇高であっても、決して、市民や地域に受け入れられることはない。よって、組織としてのガバナンスを強化し、より効果的に運動展開できる環境構築に務めると共に、これまでの検証と、各運動の効果測定を可能とする組織を構築していきたい。また、他団体とのさらなる連携や日本青年会議所、北海道地区協議会へのコミットメントを鮮明にし、我々の運動をさらに波及させていきたい。

結びに

 たった150年前、この地はおそらく原野だったでしょう。
その原野に降り立った先人たちは、未来に対してどんな想いを馳せたでしょうか。
そのとき描いた先人たちの未来は判らずとも、抱いた志は、いまの札幌につながる高邁なものだったでしょう。

我々は、これより誰もが創造したことのないサッポロを描きます。そして、我々が描く未来のサッポロは、誰もがこの地を誇りに想う活気に満ち溢れたまちです。

「志は気の帥なり」
孟子

我々の抱く志が市民の気を集めたとき
我々の運動は昇華するのです。

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