理事長所信

 

社団法人札幌青年会議所 第58代理事長 佐々木 和宏

はじめに

  現在、我々が住む地球上では世界的な人口の増加による食糧不足や自然環境の破壊、また、米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危機はさらに深刻化し、世界金融システムのあらゆるところでその影響が拡大しており、世界経済成長も著しく減速するなど、様々な問題が起こっております。日本国内においても経済、地域、世代間格差の拡大や行政の財政破綻など、国、地方を問わず未来へ向けて非常に困難な問題を多く抱え、我々は不安を抱きながら日々を過ごし、将来に確たる見通しが持てない状況が続いています。しかし、こうした困難な時であるからこそ、志を同じくする多くの青年の英知と勇気と情熱を結集し、新しい未来を切り拓いていかなければならないのです。
  戦後の混乱期に創立された青年会議所は、日本の、地域の復興を目指す若者が主体的に創り上げた組織であり、今日に至るまで多大なる実績を積み重ねてきました。先達が築き上げた創立の精神に今一度立ち返り、新しい未来を築き上げるためには、我々メンバーが率先して運動を展開していかなければならないのです。メンバーが一致団結し、心の底から湧きあがる熱い想いを持って主体的に行動するからこそ、札幌を明るい豊かなまちへ、新たな未来へと導くものだと確信いたします。

 

JCに誇りと責任を持って

 1951年に27名のメンバーで創立された(社)札幌青年会議所の会員数は1990年度の462名をピークに近年は減少傾向にあり、2008年度には160名を切る会員数にまで減少しております。この現状について皆様はどのように考えますか。あなたは心の底からJCは素晴らしい組織だと自信を持って人に伝えることができますか。あなたはあなたにとって一番の親友にJCへの入会を勧められますか。この組織を構成するメンバー一人ひとりの熱い情熱と高い志なくしてこの組織の発展はあり得ないのです。会員拡大ができていないのはJC運動の趣旨が理解されていないのではなく、そこで活躍する我々の姿勢が市民に理解されていないのではないでしょうか。会員拡大の結果の数値は、我々の運動に対する社会・地域の評価そのものであり、我々の活動の最もわかりやすい成果であります。メンバー一人ひとりがこの組織に誇りと責任を持ち、我々の運動が地域を変え、社会を変えるのだと自信をもって市民に発信し、伝播していかなければならないのです。
  青年経済人らしく会員拡大の数値目標を明確に掲げ、組織としての綿密な戦略を立て、熱い情熱を持ちLOM一丸となって会員拡大に取り組んでいきます。

 

地域経済の活性化

 公共事業の減少や個人消費など需要が落ち込み、北海道、札幌を取り巻く経済環境は依然と厳しい状況にあります。(社)札幌青年会議所には札幌を企業基盤とするメンバーが多数おり、札幌経済の低迷は近年の会員数の減少や退会者の増加に少なからず影響しているものと思います。我々はJCメンバーである以前に企業経営に携わるリーダーなのです。企業があってJC運動ができるのであって、JCに在籍しているからこそ企業をより発展させなければなりません。そして青年経済人が集う我々JCメンバーだからこそ地域経済を活性化させる責務があるのです。
 企業も社会の一員であり、地域と一体となって社会貢献活動に積極的に参画することは企業の社会的責任でもあります。企業の業績を上げることのみを目的とするのではなく、地域社会と共に生きる企業として、積極的に地域貢献活動を行うことで企業価値を高める努力が必要だと考えます。
 先行きが見えない厳しい経済状況の中、明るい未来を切り拓いていくには、我々JCメンバーを含めた青年経済人が自らの資質を向上させ地域経済へ元気を発信し、経済をより発展させることが必要不可欠です。青年経済人の元気なくして、地域経済の活性化はあり得ないのです。

 

市民主導のまちづくり

 「札幌市市民まちづくり活動促進条例」が平成20年4月1日に施行され、まちづくり運動も行政主導から市民主導へと大きく流れが変わってきております。札幌にも2000を超えるNPO法人、市民活動団体が存在すると言われ、それぞれの地域で様々な形でのまちづくりが実践されております。しかし、その団体の多くは資金、人材など様々な問題を抱えながら活動しているのが現状だと思います。(社)札幌青年会議所はこれまでの長きに亘る運動の中で培われてきた行政、企業、各諸団体との協働関係、また、各事業を行う上での素晴らしい運営能力を持っている組織だと自負できます。
 我々が目指すまちづくり運動の方向性を明確に示す中で、共感していただく多くの方々と連携し効果的な運動を展開することで、より拡がりのある市民主導のまちづくり運動を推進していきます。

 

魅力あるまち札幌

 明治2年、蝦夷地から北海道と改称し開拓使を設置、このまちの近代史は幕を開けました。先達は円山の丘からはるか東方に広がる大地を見渡し、まちづくりの構想を練ったと言われています。現在、日本で5番目に多くの人口を抱える道都として発展を遂げた札幌は「住んでみたいまち・行ってみたいまち」としても注目されています。「真の国際人とは英語が堪能な者ではなく、自分自身のことを、そして自分達のまちの魅力と歴史をよく知っている者だ」とは、このまちとも縁の深い、新渡戸稲造の言葉です。札幌は恵まれた自然や気候、文化を持ち合わせた魅力あるまちです。四季折々の表情を見せる札幌には、我々が気づいていない魅力がまだまだ多数あると思います。
 我々は北の大地に夢を追い続けた先達の努力よって築き上げられた札幌の歴史や文化を誇りにし、多くの人に愛される札幌をより魅力あるまちに発展させ、次代に引き継いでいかなければならないのです。

 

笑顔溢れるまち札幌

 札幌には我々の先輩たちの誘致運動がきっかけとなり誕生した「コンサドーレ札幌」を始め、「北海道日本ハムファイターズ」、「レラカムイ北海道」と10年ほどの間に、3つのプロスポーツチームが誕生しました。
 スポーツは見るものに感動と勇気を与えると同時に、自分達のまちのチームを応援することで郷土に対する想いを育む力を持っています。また、子どもたちにとっても身近にいるスポーツ選手に憧れを感じ、将来の夢や目標を持てるきっかけとなり、牽いては健全な心の育成に大きな影響を与えていると思います。スポーツとは、見るスポーツや体育としての厳しいスポーツばかりでなく、老若男女誰もが気軽に行うことができる側面も持ち合わせています。多くの魅力を持つスポーツには、市民主導のまちづくり運動を展開する上でも、大きな可能性が秘められていると確信しております。
 誰もが身近に感じることができるスポーツを通じて多くの市民が夢と希望を持ち、笑顔溢れるまち札幌を創造していきます。

 

子どもが健やかに育つまち

 携帯電話やパソコンの普及を始め、子どもたちを取り巻く生活環境は著しく変化してきており、その影響で今まででは考えることができないような様々な事件や犯罪が起こり、連日のように報道されております。また、子どもだけの問題ではなくモンスターペアレンツに代表されるように親と学校との間の問題も昨今非常に深刻になっております。
 我々が子どもの頃は、地域社会の中で大人や様々な年齢の友人との交流を通し、多くの経験を積み重ねることができました。しかし、現在では、地域における人間関係の希薄化、モラルの低下などから、地域社会の教育力は低下していると言われています。
 地域の人々のだれもが自分の住む地域に誇りと愛着を持ち、学校・家庭・地域社会がお互いに手を取り合い連携していく中で、明日を担う子どもたちを健やかに育てていく環境を醸成していかなければならないのです。

 

心のふれあいを大切に

 戦後、日本はめまぐるしく生活環境が変化して、物質的には裕福になり非常に便利な世の中になりました。しかし、人と人との心のふれあいが希薄になり、何かをしてもらうことを権利のように考えている人が増えているように感じます。
 昔の人はどうだったのでしょうか。きっと生活は、今よりずっと苦しかったと思います。しかし、今よりずっと思いやりの心、感謝する心を大切にしてきたのではないでしょうか。  また、自然との関係がとても深く、太陽や雨などの恵みに無条件に感謝していたと思います。 
 我々は人として、もう一度自分の心の中を見つめ直し、人と人との心のふれあいを通じて思いやりの心、感謝する心を取り戻さなければならないと強く感じます。

 

学び舎としてのJC

 JCに入会して自分自身の人間力、資質を向上できたと思っていますか。JCの三信条の「修練・奉仕・友情」にあるように、自己修練をすることもJCの担いの一つです。
 私はJCに入会して多くの先輩諸兄、メンバー、入会したからこそ出会った多くの人たちに、沢山のことを学ばせて頂きました。もし、JCに入会していなければ、間違いなく今の自分は無いと心から思っております。もし、入会していなければ感じることができなかった様々な体験、真剣に議論し意見をぶつけ合ったからこそ培われた仲間との友情、そのすべてが貴重な経験でありかけがえのない時間でありました。
 JCはただ入会すれば多くの友達ができ、自分自身の資質が高まる組織ではありません。メンバー一人ひとりが高い志と素直な心を持ち、明確な目的意識を持って参画しなければ得るものは少ないと思います。JCに入会したからこそ多くの素晴らしい仲間ができ、自分自身が大きく変わった、JCに入会したからこそ自分自身の資質を向上することができたと胸を張って言える組織にしていかなければならないのです。貴重な時間とお金を費やし活動しているのですから、自分を支えてくれているすべての人に感謝の気持ちを持ち、自らの資質を高めると同時に社会へ、企業へ、家庭へと自らの行動で還元していく責務があるのです。

 

おわりに

 いま世界で毎日およそ25,000人の人々が飢餓あるいは飢餓に関連した死因で亡くなっています。そのうち4分の3は、5歳未満の子どもたちです。実に5秒に1人の割合で子ども達が飢餓で亡くなっているのです。

 

今日、生きていることに感謝してください。
人は決して一人では生きられないのです。

 

あなたは何のために生きているのですか?
あなたには愛すべき人がいますか?
あなたには守るべき人がいますか?

 

あなたは何のために生きていますか?
自分自身に問いかけてみてください。

 

 

 

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