理事長所信

基本計画 (基本理念・基本方針)

基本理念

創立60周年を迎えた今 未来へ向けて種を蒔こう
次代を担う 子ども達の為に
~誇り高き市民による 真に自立した力強い札幌の創造~

基本方針

1.-創造- 未来へ向けて~ 未来を見据えた運動の実践と中長期ビジョンの発信
2.-共生- 現在(いま)を生きる~ 「個と公」「縁と輪」の調和した市民主導型社会の構築
3.-愛心- 過去から学ぶ~ 愛と誇りに満ち溢れた心の育成事業の推進

 

理事長所信

社団法人札幌青年会議所 第60代理事長 北嶋 仁

はじめに

 

 希望と期待に満ちた21世紀を迎えて早10年が経過した。当時パリの凱旋門の前で多くの人々と共に21世紀へ向けたカウントダウンを声高に叫び、0から1という文字の変化にただ高揚し、その歴史的瞬間に身をおいている事に感動した。21世紀になれば何かが変わるといった「何か」も分からないまま漠然と期待した明るい未来と、誰かがやるだろうといった「誰か」も分からずに他者依存した豊かな未来。あれから10年―――
 21世紀を迎えてすぐに聞き慣れるようになったテロという名の新しい暴力、依然として生命と主権が脅かされている他国との状況、格差の縮まらない南北問題、世界では毎日およそ2万5千人が飢餓に関連して亡くなっているという深刻な食糧問題、国内に目を向ければ年間3万人を超える自殺者、増え続ける幼児虐待、人と人との繋がりの希薄化、教育をめぐる様々な問題、依然無くならない政治とカネの問題・・・
 あの日夢見た明るい豊かな21世紀とは程遠い現実を目のあたりにして気付いた事。
それは全ての結果には原因があり、その原因は己にあるという事。そして今種を蒔く行動を起こすのは、現在(いま)を生きる自分だという事。高みの見物をしていては、何も変わらないという事。全ては自分だという事だったのです。

 

一Jayceeとして

 「人として一番いけない事は何なのでしょうか」
ある人がお寺の住職に尋ねました。人を傷付ける事でしょうか。時間を無駄に浪費する事でしょうか。人を騙す事でしょうか。
その住職はこう答えます。
「人として一番いけない事は『高みの見物』をする事です」
 世の中には本当に多種多様な人がいます。要領の良い人もいれば悪い人もいます。すぐに何でも理解できる人もいれば、時間のかかる人もいます。堂々と話が出来る人もいれば、照れ屋な人もいるでしょう。ただそんな事は、その人の価値を判断する際においてそれほど重要な事ではないのです。本当に重要なのは、その人が『高みの見物』を決めこむ人なのかどうかです。我々は現在(いま)を生きる責任世代、一Jayceeとして傍観者ではいけません。一人ひとりは微力でも決して無力ではないのです。
 ――我々の運動が 本気で時代を動かすんだ――
そういった気概のもと、一人ひとりが英知と勇気と情熱を持って「高み」から地に降りて行動を起こした時、我々は更に(社)札幌青年会議所の価値を高め、真に必要とされるJCとして飛躍する1年となるでしょう。

 

60周年から始まる未来

 本年(社)札幌青年会議所は、創立60周年を迎えます。人間でいけば還暦にあたり、この時に着る赤い衣服は「再び生まれた時に還る」、つまり第二の人生へと旅立つという意味があるそうです。戦後すでに65年が経過し、この組織も60年を迎えた現在、我々を取り巻く環境も、それに伴って我々の運動も、大きな一つのサイクルを経て又新たなサイクルに入る、そんな年だと感じています。
 この年に我々がすべき事は、過去から今学ぶべき事を学び、一人ひとりがまず自身の立ち位置と存在意義を自分の中で明確に確立した上で、己を律して現在(いま)を力強く生き抜く覚悟を持つ事です。そして未来のまちの為、次代を担う子ども達の為に、新しい発想を持って新たな種を蒔く行動を起こす事です。混迷する現在においては過去の成功体験や既成の概念に捉われる事なく、新しい発想と価値観を持って未来を描いていく必要があります。そして我々青年に求められているのは、まさしくその新しい発想だと思うのです。
 創立60周年を新たなスタートと捉え、青年らしく思い切って行動して参りましょう。未来は我々の行動の先にあるのだから。60周年から始まる未来とはあなたそのものなのだから。

 

世界の中の札幌

「札幌はどんなまちですか」と訊かれて、あなたは何と答えるでしょうか。
「札幌らしさ」とは何でしょう。
 私たちの住む札幌は、自然と都市が見事に共存するまちであり、文化、芸術、スポーツ、食など様々な恵みを体感出来る本当に素晴らしいまちです。ただ多種多様な要素のあまり、全ての個性が一人歩きしている様にも感じます。
世界を見据えた際に札幌は今後どの分野の価値を高めていくのか。
多種多様な個性を包括的にブランド化していくのか。
新しい「札幌らしさ」を創造していくのか。
 一つだけ確かな事は、我々は有形無形に関わらず魅力ある「札幌らしさ」を、世界の中の札幌というマクロ的視点から明確に構築していく必要があるという事です。なぜなら地域分権型社会に向けて、個の確立による他地域との差異化、競争力の向上などの外部要因はもちろん、一番大切なのは市民の地域に対する誇りや郷土愛を醸成する事だと思うからです。そこに住む市民が、地域のアイデンティティを日常的に認識し、自主的なまちづくりを行い、何よりそんな地域での生活を楽しんでいる。そんな札幌こそ、市民が誇りを持てるまちだと思うのです。

 

真に必要とされるJC

 我々の運動を表す言葉の一つに、不連続の連続という言葉があります。単年度制という不連続の組織の中にあっても、運動の方向性は一貫して連続していかなければならないというものです。この言葉通り、我々は単年度制という枠組みを考慮しながらも、しっかりとした中長期ビジョンを持って運動を展開する事が重要です。なぜなら明るい豊かな社会の実現の為に計画的に実行できる組織でなければ、真に必要とされる組織とは成りえないし、メンバーにとっても目指しているものは何かが共有出来ていなければ、向かう方向さえも見失ってしまいかねないからです。計画的にとは「実践と検証」のサイクルをベースにした継続性と一貫性を持った運動を推し進める事であり、その為には中長期的な視野を持った目標設定とそれに伴う運動指針が必要です。

 5年後、10年後の札幌に何を見ているのか。どんなまちになって欲しいのか。その為にはどんなテーマで物事に当たるのか。我々はこの60周年を機に将来の方向性を確認し、ビジョンの実現に向かって邁進する中長期的な運動指針を発信します

 

市民参加から市民主導へ

 中央集権型社会から地方分権型社会へと移行しつつある流れの中、我々青年会議所の目指すべきところとして、真に自立したまちの構築を掲げたい。真に自立したまちとは、本来の権利者である市民が主体となったまちづくりの在り方であり、同時に自己責任を伴うまちづくりの在り方です。
 札幌市では、2007年に「自治基本条例」が施行され、自治体も市民が主役のまちづくりを推進してきましたが、市民が主体的にまちづくりに係わり合いを持つまでには至っておらず、様々な地域活動を通じた行政依存型の市民参加に留まっているのが現状ではないでしょうか。
 我々が目指す、個人の自立性(市民の自主自立意識)と社会の公共性(開かれた行政)が生き生きと協和する確かな時代を築いていく為には、市民がまちに関心を持ち行動する意識変革を促す事はもとより、行政と連携をとりながら市民が積極的に社会に参画出来る機会を創出する運動を展開すべきです。我々は本年度、その第一歩を踏み出す事により、「個」と「公」が調和した力強い市民主導型社会の実現を目指します。

 

縁を繋ぎ 輪を拡げる

 「和を以って貴しと為す」という聖徳太子の言葉が示すように、私たち日本人は本来共生の民族であったはずです。
 かつて地域には、ガキ大将を筆頭に学校とは違う年代を問わないグループが存在し、そんな中で私たちは共生していく基礎を学んできたし、近所に住む厳しくも優しいカミナリ親父の存在により、社会のルールや礼儀礼節までをも学んできました。しかし地域の連帯感が低下した現在、人と人との繋がりの希薄化から様々な問題が顕在化してきています。
 このような時代だからこそ、我々は地域の人と共に歩み、共に育ち、共に生きるといったコミュニティを創出する運動を今後も推進していく必要があります。更にはそのコミュニティの輪を拡げ、より波及性のある運動とする為には、様々な諸団体と有機的に繋がる為のネットワークを構築する事が必要です。
我々自身が「開かれたJC」をベースに運動を展開し、地域の子どもからお年寄りまでの縦軸の「縁」を繋げると共に、様々なまちづくり団体との横軸の「輪」を拡げるといった双方向からの視点で、「和」を基盤とした地域づくりを目指していかなければなりません。

 

感じる事

 ――なんのために生まれて なにをして生きるのか
      こたえられないなんて そんなのはいやだ!――
 これは子ども達の人気アニメ「アンパンマン」の主題歌の歌詞の一節です。こんな哲学的な問いが、子ども向けのアニメの主題歌の中で歌われているのです。私は息子がこの歌を歌っているのを聴いて、子ども達が内に秘めた迸る程のエネルギーをどこへ向けて何の為に使えば良いのか、目的を見失い彷徨っている様を代弁しているかのように聞こえ身震いしたのを覚えています。
 私たちは一人で生きている訳ではなく、様々な恵みによって生かされています。本来日本では古くからそれを「お陰様」という言葉で伝えてきました。又誰もいない状況において何らかの行動をなす時には、いつでも「お天道様」が見ていると教えられたのは私だけではないでしょう。
 戦後、日本では極端な個人主義、拝金主義が蔓延し、そういった利他の精神と、見えないものに感謝する精神が失われてきた気がしてなりません。その原因はどこにあるのでしょうか。子ども達がいけないのでしょうか。
 今日の社会情勢から私の目に映るのは、社会環境に責任を転嫁し子育てを放棄した利己主義な情けない大人の姿です。増え続ける幼児虐待、モンスターペアレントの増加、進学にしか教育の目的を求められない大人、自分勝手に育児放棄する大人。全ての原因は他ならぬ私たち大人なのです。
 ではなぜ私たち親の世代に、この本来日本人が大事にしてきた精神が失われてきたのでしょうか。私はその根本的な原因は、国を愛し、地域を愛し、先人を愛する愛心の欠如にあると思うのです。

 

誇りある心を育もう

 戦後生まれの私たちは、戦争を起こした日本が悪いという教育を受けてきました。決して戦争を美化するつもりもなく、反省すべきところは真摯に反省すべきですが、過剰なまでの教育を通して日本人の尊厳が失われ、子ども達に生きる目的も教えられなくなってきたのではないでしょうか。食糧やエネルギーを他国に依存している我が国において、唯一の資源である「人」が世界に出て行く時、自分達の歴史を否定され声高に「日本を愛している」と叫ぶ事が抑制されているとしたら寂しすぎます。自国について語るときに何らかの迷いとためらいを感じながら語るなら悲しすぎます。自国や民族に愛心を表明するのは決して特異で頑迷な考え方ではなく、至極当たり前の姿だと思うのです。
「戦前・戦後」という言葉から、何か全てを一度リセットしたかのように思っている人が多いように感じるのは私だけでしょうか。あたかも自分達が新人類かの如く、過去を高みから語る人が多いように感じるのは私だけでしょうか。私たちは、どこまでいっても過去に生きた尊い先人達の延長線上に存在するのです。
 私たち自身が今一度立ち返り学びましょう。なぜなら『なんのために生まれて なにをして生きるのか』との問いに、親である私たちの世代がまず最初に出来うる事は、私たち自身が自国に誇りを持ち、未来に希望を持って力強く生きる事だと思うからです。その背中を見て瞳を輝かせている子どもの姿こそ、その問いの答えになるのだと思うからです。
 あなたは子どもに自信を持って「日本人に生まれて良かった」と言えますか?「今を一生懸命に生きている」と言えますか?
 あなたの姿こそ未来を変える。学ぶべきは私たちなのです。

 

未来へ繋ごう

 現在(いま)を生きる我々は、過去から未来へと「繋ぐ」責任を果たさなければいけません。
ユダヤの格言に『0から1への距離は1から1000への距離より大きい』というものがありますが、我々は決して0からスタートする訳ではありません。60年に亘り多くの先輩諸兄が積み重ねてきた、しっかりとした土台の上に存在するのです。その事を深く感謝出来れば、今やらなければいけない事が自ずと見えてきます。Jayceeとして現在(いま)を生き、未来の青年会議所の為に行動するのは我々しかいないのです。
仲間を増やそう、志を同じうする仲間を。
 我々の運動は多くの仲間によって、より推進力を増します。多くの仲間によって、より発信力を高めます。多くの仲間によってこそ、時代を動かせるのです。
 あなたが多くの仲間との出会いから学び得た事を、未来のメンバーにも感じてもらう為に。責任を果たすのは、我々なのです。あなたなのです。

 

伝えたい事

 (社)札幌青年会議所の60年の歴史は、多くの先輩諸兄が常に未来のまちの為に、次代を担う子ども達の為にといった「先への想い」を胸に、混沌を未知の可能性と捉え、変革の能動者たらんと行動してきた志の歴史です。いつの時代も現実から目をそらす事なく、パンドラの箱の底にも希望を見出し、常に自分達の手で未来を切り拓いてきたのです。
 そしてその運動の原動力は、いつの時代もどんな時代も、志を同じうする仲間との絆であり、仲間への無言の信頼と感謝であったはずです。心で泣きながらも苦しい様など微塵も見せず、歯を食いしばりながら額に汗して走り回る仲間を見て、こいつの為に何かしてやりたい、こいつを男にしてやりたい、と感じた事があなたにもあるはずです。何の見返りも求めず、何の疑いも持たずに自分を信じてついてきてくれる仲間を見て、弱音など吐けずひたすら走り続けた事があなたにもあるはずです。
そんな仲間の心意気を原動力とした「先への想い」こそ、創始から60年間の永きに亘り、脈々と受け継がれてきた我々のJC精神(マインド)であり、我々は公益性を鑑みながらもこの精神を今後も守っていかなくてはなりません。
 そしてそういった一人ひとりの想いの集合体がJCであるならば、JCがあなたに何かをしてくれる訳ではありません。あなたがJCで何を感じるのか、何を得るのか、何が出来るかなのです。
この組織で心意気を持って多くの仲間を得るのも、志を持って未来の為に行動を起こすのも、信念を持って自分を成長させるのも、全てはあなた次第です。
 青臭くたっていい。泥臭くたっていい。心意気を持って集おう。志を持って進もう。
 我々には仲間がいる。あなたがいる。60周年という記念すべき年に、現役として
「JC物語」を綴るのも、我々なのです。そして、あなたなのです。

 

自分が様々な恵みに生かされている事を知り
繋がった流れの中に存在している事に気づく
すると「過去」への感謝を感じて
「未来」への責任が湧き出てくる
その為に自分は一体何が出来るのだろう
この問いの答えこそが「志」の原点

―― 今未来へ向けて種を蒔こう ――

Jayceeよ! 志高く、青くあれ!

 

 

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